本制作の前のエスキースをやり過ぎると、新鮮な気持ちが萎えてしまう。と言って、あまりに制作の方向が曖昧な内にカンバスに入ると、無意味に思えるやり直し作業に引っかかりもする。その作業で思いがけない発見や出会いがなければ疲れも大きい。
しかし、今日の制作は遠回りをしたが、今後に繋がるところまでもってきたので良しとしたい。
ところで、制作の合間に、古いスケッチブックを整理していたら、メモ帳代わりにしていた小さなクロッキーブックが出て来た。一種の制作ノートで主に、オリジナル額縁の寸法取りや、地塗り塗料の配合比率、複写作業の撮影データ等が書いてある。
その中に、まれではあるが、当時読んでいた本からの書き抜きが少しあった。実生活で日記など付けたことはないが、忘れたくない言葉を残したものらしい。そう、自分でもほとんどメモしたことすら忘れていた。
それらの言葉は、いつの間にか自分の記憶の奥底に定着し、己を律するものとなっているものも多い。例えば、
「よく考えたときほど、よく生きたことはけっしてない。」フェルナンド・ペソア 不安の書
「すべての事実は、課題のためにある。解決のためにあるのではない。」ウィトゲンシュタイン 論理哲学論考
最後にペソアをもう一つ
「わたしは わたしだ」と言えるほど自分の心の境界を知っている者が誰かいるだろうか?

