デジタル技術が開く新しい絵画のありかた

夜明け

ずいぶん昔のことですが、私が絵を学び始めた頃、某予備校で、画集は安価なものを買ってはいけないと言われました。要するに普及価格の画集は絵の印刷品質があまり良くなかったのです。

そして21世紀、デジタルの時代が来ました。当初のインクジェットプリンターは4色印刷程度で、現在のものと比較すればたいした性能ではありませんでした。それでも絵を印刷してみるとかつての高価な画集に引けを取らない、勝っている気すらして驚いたものです。

それから四半世紀、最新のプリンターは10色以上のものもあり、印刷用紙も昔からある高級版画用紙に劣りません。そして、それから出力したものは、額装しての展示・鑑賞に充分耐えるものとなっています。

話は少し飛びます。LPレコードの時代、私が初めてCDを買ったころは、プレイヤーもCD自体もかなり高価でした。何しろ当時の最新技術で、なんと音楽CDを作る技術を持っているのが日本と西ドイツだけだったのです。

ですから、一般のミュージシャンが個人でCDを制作するなど不可能でした。しかし、今はどうでしょう。無名のミュージシャンがCDを作って販売することができています。

同じことが絵の世界にも起こって良いはずです。今は高品質の絵のプリントが個人でも簡単に安価にできます。また、原版がデジタルデータですから何枚刷っても劣化することなく、その保存も確実でいつでも即時に印刷できます。

ですから、音楽CDのように手に入れやすい価格で販売し、売り上げのアップを増産により行うことができます。(もし絵の印刷枚数を限定すれば、人気のものは価格が上昇し誰でも買えるものではなくなり、昔からの版画と同じものになってしまいます。)

そうすれば、絵を描く者にとっては、人気が出たからと言って、プリントの価格を上げる必要もなく、作品の粗製乱造に走る危険も減ります。また、絵のプリント価格を作家により変えなくとも良いと思っています。新人も中堅・ベテランも、いや巨匠と呼ばれる人さえ同じ、 そう、小説やCDに巨匠価格があるでしょうか。

人気のある絵も、コアなものも、佳作・傑作でも、好きな絵を誰でも買える、画家は小説家や音楽家のようにベストセラーでリッチになる、そんな時代の到来を想像しています。